開業医インタビュー ほたるのセントラル内科 内田大学院長

年々増加する糖尿病患者の需要に応えるべく開業を決意。
君津・木更津地域の外来センターとして機能する専門クリニックを目指して

※1489magazine vol.4―2011年7月発行号より転載

ほたるのセントラル内科
〒292-0038 千葉県木更津市ほたる野3-30-3

 

木更津市ほたる野――閑静な住宅地が立ち並び、整備された道路が縦横に走る美しい街だ。
この街のメインストリートで糖尿病・内分泌代謝の単科クリニックとして、専門性の高い医療を提供しているのは、「ほたるのセントラル内科」(以下、同クリニック)の院長内田大学先生だ。
君津・木更津地域の糖尿病・内分泌代謝内科専門クリニックとして親しまれ、多くの患者さんが内田院長を頼りに通院している。

ほたるのセントラル内科 院長内田大学先生

開業の動機

内田院長は、山梨医科大学を卒業後、千葉大学第二内科に入局された。米国チューレン大学での留学、千葉大学保健管理センター、千葉大学第二内科での勤務を経て、君津中央病院で6年間、君津・木更津の地域医療に携わってこられた後、2008年1月に同クリニックを開業された。

内田院長が開業を考えるようになったのは、君津中央病院に赴任して3年ほど経ってからだという。
「私は、君津中央病院の内分泌代謝内科の部長職としてこの地域に赴任してきました。生活習慣の変化に伴い、今や40歳以上の10人に1人は糖尿病患者とも目されていますが、この地域も例外ではなく、年々、糖尿病外来患者数は増え続ける一方でした。診察ブースを設置しても追いつかないほどで、このような状況を目の当たりにし、患者さんは専門性のある診療を望んでいるにもかかわらず、この地域には糖尿病・内分泌代謝を専門とする医療施設が十分存在しないのではないかと感じるようになりました。臨床医として毎日多くの外来患者と接する中で、君津中央病院の外来の受け皿となるようなクリニックを開院してこの地域のプライマリケアを担いたいという気持ちが強くなっていったのです。」

開業地選定

糖尿病・内分泌代謝内科での開業は、患者滞留時間が長く、検査室も設置する必要があるため、一般内科よりもやや広い建物面積(約70坪以上が理想)が必要だ。その上、検査機器等の設備投資も必要となるため、他科の開業に比べ初期費用は高額となる。内田院長も、開業に際して一番ネックになったのは開業資金だったと振り返る。
「開業に向けて特段、貯蓄をしていたわけではありませんでしたし、融資が下りるという確証もなかったため、なかなか開業に踏み込めませんでしたが、医歯薬ネットの開業セミナーで『建て貸し』(※)のスキームを知り、また、即座に事業収支計画を作成してもらって経営が十分成り立つことも判明したので、本格的に開業に向けて動き始めることにしました。ほたるのセントラル内科
開業地については、勤務医時代の患者さんを母体として立ち上げていく考えだったので、周辺4市(木更津市、富津市、君津市、袖ケ浦市)のどこからでも通院しやすい場所を中心に調査をしてもらいました。数件の建て貸し物件を提示してもらったのですが、君津中央病院からの直線距離が約5㎞で病診連携がとりやすく、新興住宅地で競合となるクリニックが少なかったため、現在の土地での開業を決意しました。」

※土地オーナーの費用でクリニックの建築及び内装工事をおこない、長期(15年から20年)で借り受ける契約を結ぶ開業形態のこと。

開業に対する不安を乗り越えて

同クリニックが開業してから約3年経つが、現在は、一日約80人の外来患者が来院するほどの盛況ぶりだ。糖尿病・内分泌代謝内科の高い専門性をお持ちで、なおかつ、需要も十分見込める土地での開業だったが、それでも開業前は不安でいっぱいだったという。
「果たしてこの地で糖尿病専門クリニックが成り立つのか、開業しても患者さんが一人もこなかったらどうしようと、常に不安が頭をよぎっていました。私は、この不安を払拭すべく、開業前に万全の準備をした上で開業に臨もうと考えました。君津中央病院で勤務医として働いていた時、カルテベースで約1300人の患者さんを診察していたのですが、そのうちの約800人に許可を得て、内覧会の案内とクリニックの場所を書いた手紙を私信として発送しました。個人情報の関係上、誰彼構わず一斉送信するのは問題となるので、診察中に患者さんに開業する旨を伝え、手紙送付の承諾を取った方にのみ送付しました。印刷物だけ発送するのも問題があるとのことだったので、宛先は全て手書きし、手紙の文末には直筆で署名をしました。もちろん、大学の事務局にも確認を取り、不義理がないように手配しました。大変な作業でしたが、万が一でも問題にならないよう、念には念を入れて準備しました。」
先生の努力が功を奏し、内覧会には二日で計500 組以上が来院、診察開始後も初月から1日40人以上が来院する好スタートとなった。

効率的な診療体制の構築

現在では、1日80人以上が来院するほどの盛況ぶりを見せる同クリニックだが、これだけの患者数を内田院長一人で診察するには、効率的な診療体制が不可欠だという。
「ここまで患者数が増えると、私一人で診察するのは物理的に無理がありますので、当クリニックでは、医師と看護師の分業化を推進することにより、この問題をクリアしています。例えば、初診のアナムネーゼ聴取や足病変のスクリーニングは看護師に任せて、より専門的な診察は自分でおこなうようにしています。このような仕組みを導入することによって、診察の効率化を図れるだけでなく、結果的により専門性の高い診察を提供できるようになりました。」

コメディカルへの教育

このような仕事の分業化をおこなうためには、コメディカルの教育が欠かせないと内田院長は語る。
「コメディカルへの教育には惜しむことなく投資をしています。糖尿病の看護師学会はもちろんのこと、研究会や学会には積極的に参加してもらうようにしていて、その際には、欠勤扱いにせず、参加費・交通費・宿泊費も当クリニックで負担しています。また、教育体制としては、毎週15分間、糖尿病・内分泌のレクチャーを開催しているのですが、これには看護職だけではなく事務職のスタッフにも参加してもらっています。これらの取り組みの結果、自分自身の仕事が楽になったので、人材教育はうまく機能していると実感しています。」

今後の目標

ホテルのセントラル内科駐車場

「三年前から診察を始めた当クリニックですが、今後は、更に拡張していきたいと考えています。今年からの取り組みとしては、千葉大学の先生を非常勤医師として迎えて週3回、二人体制での診療をはじめ、クリニックの駐車場も拡張して、より多くの患者さんを受け入れられる体制を整えました。君津・木更津地域での糖尿病内分泌の外来センターとして最適な医療を提供していきたいという思いは、開業当初から変わっていませんので、現状に満足することなく、よりよい医療を提供していけるよう、努力を続けていきます。」

 

Doctor’s Profile

 

君津・木更津の地域で専門性の高い医療を提供することに対して、人一倍強い思いを持つ内田院長だが、当クリニックのネーミングにもこの想いが反映されている。
「当クリニックの開院準備をしている時、ちょうど『ほたる野』という地名が決定したのです。きれいな水しか飲まない『ほたる』に、野原の『野』がついていて、とても綺麗な地名だと思い、クリニック名に取り入れることとしました。『セントラル』については、この地域のセンターとして機能するクリニックになりたいという思いがあったからです。」

(掲載内容は2011年掲載時のものとなります)

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