2021年10月、ファミリー層が集う兵庫県宝塚市川面エリアに「ながいキッズクリニック」が開院した。院長の永井正志先生は小児内分泌の経験が豊富で、クリニックではその強みを生かして成長発達外来を設置している。コロナ禍の開業だったにもかかわらず開院直後から多くの患者が来院しており、2025年4月には医療法人化を達成した。 今回は永井先生のこだわりが詰まった、小児患者ファーストのクリニックについてお話を伺ってきた。
祖父母も両親も開業医という医者家系で育った永井先生にとって、医療は身近な存在であった。中学生の頃は弁護士に憧れていた永井先生だが、ひょんなことから医学部を目指すことになったという。
「中学生の頃は愛媛県松山市にある中高一貫校に通っていたのですが、松山市では中学卒業のタイミングで“将来の夢”をテーマにした卒業文集を書き、各学校から代表を選出して作文を発表するイベントがありました。私は将来の夢というテーマで作文を書くにあたって、母に勧められて読んだ『医者が末期がん患者になってわかったこと ある脳外科医が脳腫瘍と闘った凄絶な日々』という本を題材にして、将来は医者になりたいという作文を書いていました。すると、なんと私が書いた作文がクラス代表に選ばれたのです。学校代表にはならなかったのですが、クラス代表として全校生徒の前でその作文を発表する機会があったので、図らずも大勢の前で、医者になりたいと宣言することになりました。中高一貫校ということもあって後には引けなくなり、高校の文理選択では理系に進むことにしました。人助けができる職業に就きたいと思っていましたし、医者家系ということも背中を押し、医学部に進学しました」
もともと子どもが好きだったという永井先生だが、小児科を選んだ理由はそれだけではない。
「昨今は医療費の高騰を受けて延命治療の見直しの声が上がるなど、終末期医療の在り方については医者側も葛藤があると思います。しかし子ども相手だと事情が異なりますし、率直に、未来がある子どもたちに対して何かがしたいと思いました。尚且つ大人と比べて子どもには治療方針などの自己決定権はあまりないので、基本的には保護者が考えることになります。そして保護者の方が誤った選択をしないように、私たち小児科医が持つ決定権も大きくなります。医療はサービス業のようになっている側面もありますが、小児科医は保護者の方に対して厳しいことを言わなければいけない場面もありますし、そうしたところに責任の重さとやりがいを感じています。他にも、例えば私が循環器の専門医だった場合、10年上の先生の技術を超えることはまず不可能です。しかし小児科は腎臓や血液、感染症など細かく専門分化していて、特に私が専門としている内分泌の先生はあまり多くないので、医師歴が10年以上離れている先生から頼っていただくことも多々あります。勉強すればするほど小児科医として成長できる点が、小児科の面白さの一つだと思います」
開業医である祖父母や両親の影響で、医師になった頃から開業を念頭に置いていた永井先生は、大学院生の頃、医歯薬ネットの開業セミナー「医院開業知識集中講座」に奥様と共に参加した。
「セミナーを聞きながら、医歯薬ネットさんの“嘘をつかず、誠実に医師と向き合う姿勢” に好感を持ちました。他社コンサルの話を聞いた時は、『儲かりますよ』とか『自分の時間ができますよ』という甘い話を聞かされたのですが、両親が暇そうにしているところなんて見たことがなかったですし、勤務医の方が時間の融通が利くだろうとも感じていました。儲かるという話も、他社のコンサル会社が言うような『開業したら儲かる』ではなく、医歯薬ネットさんは『しっかりと場所を精査すれば安心なクリニック開業が実現できる』と言っていたのが印象的です。他社のコンサル会社からはドラッグストア主導の医療モール物件や、商業施設に隣接したテナント物件を提案されていたのですが、医療モールなどは絶対に内科も入るので、コンサル側は内科と小児科間での兼ね合いなどを考慮しているのか疑問を抱きました」
例えば医療モールに内科クリニックと小児科クリニックが入り、両クリニックでインフルエンザの予防接種を実施するとなると、患者の取り合いが生じる可能性がある。内科クリニックの診療内容によっては小児科クリニックの診療内容が制限される可能性もある為、注意が必要なのだ。
「医歯薬ネットさんのセミナーでは、自由に診療ができなくなる可能性があるから安易にテナントを選んではいけないと断言していました。終始、医者側の目線に立った説明をしていることに信頼を置くことができたので、開業支援契約を結びました。安価な開業支援料金にも関わらず※、きちんとサポートしていただけて良かったです」
「改めて、コンサルによって人生は大きく変わるのだと実感しています。現在兵庫県内では西宮エリアがクリニック飽和状態となり、この宝塚の地に開業ラッシュが来ています。その流れの中で、私から見ても『そこで開業したら既存クリニックと揉めるだろう』と思うようなところにクリニックができることがあるのですが、これはコンサルの問題だと思います。診療圏調査を見れば距離感的に問題が起こることは明白なのに、その場所を提案するコンサルもいるのだと実感しました。医歯薬ネットさんは開業エリアに対する考え方がしっかりしていたので、良かったなと思います
※ 医歯薬ネットの開業支援料金は合計33万円(税込)。開業支援契約締結時に5万5千円(税込)、不動産契約時に27万5千円(税込)をお支払いいただきます。開業準備を始める際に必要な料金は、5万5千円(税込)のみです。
ながいキッズクリニックの周辺には幼稚園や小学校があり、戸建て住宅やファミリー層が集まる大きなマンション群もあるという、小児科の需要が非常に高いエリアだ。しかし永井先生が開業する以前は、近隣に小児科をメインに掲げるクリニックは少なかった。
「最初に医歯薬ネットさんには、『小児科が専門ではない内科クリニックの先生が診ている小児患者を、自分が全て受け入れられるようなクリニックにしたい』というコンセプトを伝えていました。加えて、小児科は車での来院も多いので駐車場はマストであることも伝えた上で、開業希望地として当時住んでいた神戸周辺を挙げました。すると医歯薬ネットさんから、コンセプトに沿ったクリニックを作るには神戸だと難しいとアドバイスをいただき、伊丹市や、祖父の家があった宝塚市も候補に入れて探してもらった結果、この土地を見つけていただきました。ここから祖父の家まではなんと徒歩5分ほどの距離で、昔からよく知っている場所だったのでこの地での開業を決めました」
クリニックに入るとまず目に入るのが、青、緑、黄、ピンクのカラフルな椅子が置かれた待合室だ。絵本やおもちゃが並ぶキッズスペースの横にはコルクボードが掛かっていて、子どもの可愛らしい文字で書かれた『せんせいありがとう』というお手紙や、折り紙の工作が飾られていて、院内は朗らかな雰囲気に包まれている。 永井先生は兵庫県立こども病院で働いた経験を活かして、子どものことを第一に考えたクリニック作りを行っている。
「お子さんは色で識別しやすいという特徴があるので、診療スペースを青とピンクに色分けして、色でゾーニングしています。また、院内に音楽が流れていると聴覚過敏のお子さんにつらい思いをさせてしまうので、院内はスピーカーを排除しています。そして成長発達外来を設置することは最初から決めていたので、診療報酬加算や患者さんのプライバシーに配慮して、診察室は個室の作りにしています」
低身長や思春期早発症に対応する成長発達外来では、身長・体重の測定と問診、エックス線検査、血液検査、そして成長ホルモン分泌負荷試験を行い、必要に応じて成長ホルモン治療を実施することになる。近隣でも珍しい小児内分泌を専門とするながいキッズクリニックには、連日多くの患者が集まっている。
「成長発達外来の需要の高さは強く感じています。まず内分泌を専門にしている小児科医は基本的に大学病院や大きな病院にしかいないので、クリニックで成長発達外来を行える医師は少ないです。患者さんは宝塚市以外にも、尼崎市や伊丹市、川西市、たつの市(兵庫県南西部)からもいらっしゃっています。小児内分泌の領域は医師でも分からない方が多いですし、患者さんも学校健診で引っかかったけどまずどこに行けばいいのか分からないと悩んでしまうと思います。大きい病院だとわざわざ学校を休んで受診しなくてはいけない中、当院は午後や土曜日にも受診できるので、そこを魅力に感じてくださった方々にも多くお越しいただけているのかなと思います」
2021年10月に開院して3年半後、ながいキッズクリニックは2025年4月に医療法人化を達成した。永井先生が医療法人化に踏み切った理由は、大きく二つある。
「まず、開業当初から売り上げがかなり順調に伸びたことで想像以上に税金が高くなってしまったので、節税対策として医療法人化を目指しました。加えて昨今人件費がどんどん上がっており、看護師さんなど必要な人材は正社員として雇用し、社会保険に入れるようにしないと人員をキープできない時代であると思います。そこで、できるだけ早く法人化して、福利厚生面を整えようと思いました」
良いことも悪いことも全て自分に返ってくる“クリニック開業”にやりがいを感じているという永井先生。そんな永井先生より開業を考えている先生方へ、こんなメッセージをいただいた。
「開業すると経営者としての側面を持つことになるので、医療行為だけをやりたい方、カルテを書くのが煩わしいと思っている方は、勤務医のままの方が良いかもしれません。もし開業を検討しているのなら、勤務医時代から診療報酬の加点について事務さんに教えてもらって、自分である程度レセプトを読めるようにしておくことがオススメです。現在レセプトの最終チェックは全て私がやっていますが、自分がレセプトを読めないと何の加算が取れるのか分からないし、事務さんに頼りっぱなしだと、万が一その方が辞めた時に困ることになります。自分が専門としている領域のレセプトについては、なぜこの加点が取れるのかとか、興味を持って学んでみてはいかがでしょうか。そして開業全般で言うと、“よく考えてやったほうがいい”と思います。開業医は都市部を中心にパンク気味ですし、私が開業した頃よりも建築費などが高騰しているので、開業というものに対して賭けるリスクが大きくなりすぎていると感じています。したがって、開業してコモンディジーズだけを診るクリニックでは立ち行かなくなる可能性が高いからこそ、何を特色として打ち出すのかが非常に重要です。そして得意分野があったとしても、それがクリニックの集患に繋がる分野かどうかはまた別問題です。開業したいと考えているのならば、クリニックで実現することができ、尚且つ他の先生にはできない自分の武器を見つけることが大事なのではないでしょうか」 (掲載内容は、取材当時のものとなります)
クリニックのレイアウト
Doctor’s Profile
【ご経歴】
・2010年 岐阜大学医学部医学科卒業
・2011年 神戸大学医学部附属病院 初期研修
・2013年 加古川西市民病院(現加古川中央市民病院)小児科 後期研修
・2015年 甲南会六甲アイランド甲南病院 小児科 医員
・2016年 神戸大学医学部附属病院 小児科 医員
・2018年 神戸大学大学院医学研究科内科系講座 こども総合療育学教室 特命助教
・2019年 兵庫県立こども病院 代謝内分泌科 医長
・2016年~2022年9月 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野
・2021年 ながいキッズクリニック開院
【所属学会・資格など】
小児科専門医、日本内分泌学会、日本先天代謝異常学会、医学博士、日本小児内分泌学会、日本小児神経学会、日本小児科学会、日本糖尿病学会、日本小児アレルギー学会
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