開業医師インタビュー

内科、消化器内科、内視鏡内科、外科、肛門科坂田 義則 院長

住所
茨城県神栖市大野原4-6-6
URL
https://kamisu-gec.com/index.html
開業日
2021年6月1日
診療科目
内科、消化器内科、内視鏡内科、外科、肛門科
開業支援実績
こちらからご覧になれます

茨城県の南東部に位置し、太平洋と利根川に囲まれている神栖市。
鹿島臨海工業地帯を擁することから飼料や素材関連の企業が多く進出し、鹿行地域の中核的役割を果たしている。温暖な気候と豊かな自然のほか、市内には公園や教育施設が充実しており、子育てに適したエリアとしても人気を集めているが、病院やクリニックの数は十分とは言えない。

2021年6月に開業したかみす消化器内視鏡クリニックは、神栖エリアで貴重な消化器外科を専門とする院長のクリニックとして、地域住民の“お腹の健康”を守っている。

病院経営の厳しい現実を目の当たりにした

父や母方の祖父も医師であり、小さい頃から医療に近い環境で育ってきた坂田先生にとって、医師を目指すのは自然なことであった。

「消化器外科を選んだ最大の理由は、父も消化器外科医だったからです。実は、昔父と一緒に手術をしたこともあります。加えて、私自身幅広い診療ができる医師になりたかったこともあり、上部から下部までの広い範囲の臓器が診られる消化器外科を選びました」

2004年に日本医科大学を卒業後、東京都や千葉県の関連病院で研鑽を積みながら、2014年より神栖済生会病院で働き始めた坂田先生。もともと開業志向はなかったが、2017年に同病院の外科部長になってから心境の変化があったという。

「外科部長という立場になると病院の経営にも携わるようになり、マネジメントについても考えなければいけなくなりました。経営ノルマなどの実情を知って病院経営の厳しさを実感する中で、このまま病院に居続けるよりも、開業して自分のクリニックをマネジメントした方が良いのではないかと考えるようになりました」

開業すべきかどうか悩んでいるときに、医局に置いてあった『1489MAGAZINE』が目に留まった。

「偶然にも、大学のサッカー部の先輩である増野聡先生※の名前が表紙に載っていて、医歯薬ネットの存在を知りました。早速増野先生に開業について相談してみたところ、医歯薬ネットに依頼したらどうかとアドバイスをいただき、セミナーに参加してみることにしました」

2019年9月に新宿で開催された「医院開業知識集中講座」に参加し、医歯薬ネットの理念や支援内容を理解したうえで開業支援契約を締結。そこから早速、開業地探しが始まった。

※増野聡先生:医歯薬ネット支援のもと、2017年5月に千葉県印西市にて「牧の原なのはな耳鼻咽喉科(現在は、医療法人社団なのはな会 牧の原なのはな耳鼻咽喉科)」を開業。
増野先生のインタビュー記事はこちらから

地域医療のハブ(集約点)を目指して

石川県出身の坂田先生はこれまでさまざまな地で勤務してきたが、最初から神栖市内で開業すると決めていたそうだ。大きな理由となったのは、神栖済生会病院で働きながら感じていた、医療需要に対して供給が不足している現状であった。

「神栖は医療が非常に不足している『医療過疎地』で、開業医もそれほど多くありません。需要が高く、外科部長として多くの患者さんを診てきた経験もあることから、神栖市で開業すれば今の患者さんの来院も見込めるのではないかと考え、神栖市内での開業を希望しました」

開業地選定においては複数の物件で比較検討を行ったが、交通アクセスの良さや視認性の高さに加えて、坂田先生が最も重視したのは駐車場の広さである。

「神栖市は人口が10万人近くいるのに市内に駅がないという特殊な都市で、完全な車社会です。そのため、駐車場の広さは何より重要でした。また、長年生活しているので市内の人口動態や交通の便、既存クリニックの位置関係や特徴などは知っていました。それらを総合的に判断し、この地での開業を決めました」

結果的に、かみす消化器内視鏡クリニックは、敷地面積約450坪の広大な土地を活かし、約90坪のクリニック、隣接する調剤薬局、そして28台分の駐車場を確保した大型のクリニックとして開業した。
また、クリニックの近くには神栖市のランドマーク的存在であるアートホテル鹿島セントラルが建っており、まさに理想的な開業地であった。

「開業地が決まった後の開業準備については、順調に進んでいきました。あまり苦労した記憶はないですね。強いて言うのであれば、建物が完成して什器を搬入していく際に、テーブルの納品が遅れたことでしょうか。それでPCなどがなかなか設置できないことはありましたが……基本的には医歯薬ネットさんから、どのタイミングで何をすべきか適切にアドバイスしていただいたので、スムーズに進めることができました。きっと私よりも、医歯薬ネットさんの方が大変だったのではないでしょうか」

かみす外観

大きなトラブルもなく開業を迎えた「かみす消化器内視鏡クリニック」のコンセプトは「お腹の専門医による診察・胃カメラ・大腸カメラ」だ。神栖市内で大腸内視鏡検査を行うクリニックはわずか2軒に留まり、クリニックには連日多くの患者が訪れている。

「開業にあたって、当院は内視鏡検査を行わない一般的な内科クリニックと総合病院の間に立ち、お腹の具合が悪い患者さんに対して当院で治療可能なのか病院に紹介した方が良いのかトリアージする、地域医療のハブ(集約点)になるようなクリニックにしたいと考えていました。現在は平均してひと月に上部内視鏡検査100件、大腸内視鏡検査50~60件を行っており、需要の高さを感じています」

内視鏡室
内視鏡室
化粧室
下剤を服用した患者さんが使用する化粧室。個室でゆっくりと過ごすことができる。

 

神栖愛とこだわりが詰まったクリニック

クリニックの外観や内装には、坂田先生のこだわりが随所に反映されている。

「外観は綺麗で落ち着くデザインにしたいと思い、医歯薬ネットさんから紹介してもらった公建社さんにお任せしたら、とても良いデザインをご提案していただけました。広い車寄せは私の希望で、車を止めてそのままクリニックに入れるように広めに作ってもらいました。外観のライトもさまざまな色に変えられるようになっています」

神栖市と隣接する潮来市であやめ祭りが開催されるとあやめをイメージした紫色にライトアップしたり、茨城県に本拠地を置くサッカークラブ・鹿島アントラーズのマスコット「しかお君」の誕生日にはアントラーズカラーである赤色にライトアップしたりと、クリニックはさまざまな顔を見せている。
さらに待合室や診察室には「しかお君」や神栖市のイメージキャラクター「カミスココくん」のグッズが並ぶなど、地元に根差したクリニックとしてのブランディングを高めている。

「当院は鹿島アントラーズが組織するビジネスクラブに加盟しています。ビジネスクラブが掲げる『地域創生を共に目指す』という理念に共感し、当院も鹿島アントラーズに協力しながら鹿行エリアの医療発展に貢献したいと考えています」

かみす待合室
待合室

 

“神栖愛”あふれる院内のレイアウトは、坂田先生が熟考し、設計士と何度も打ち合わせを重ねることで完成した。

「レイアウトは患者とスタッフ双方の動線を意識して作っています。特に大腸内視鏡検査に特化したクリニックなので、前処置室(ページ下部の図面:化粧室1・2)と内視鏡検査室の位置関係は細かく意見を出させていただきました。待合室や前処置室など患者さんにお待ちいただくスペースについては、くつろげる空間になるよう心がけました。また、激しい腹痛など緊急を要する患者さんの来院に備えて、生化学検査を院内で行えるように検査体制を整えています」

開院のタイミングが新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう時期だったこともあり、感染症対策にも力を入れて取り組んだ。

「院内は極力非接触で完結するよう、自動精算機や各種キャッシュレス対応、WEB問診などを積極的に導入しました。また、クリニックの一角には発熱患者に対応するドライブスルー診察口を設置し、コロナ禍は大活躍でした。今でも発熱症状がある患者さんの対応に使用することがあるので、設置して良かったと思います」

 

医師として、どう生き残るのか

2025年6月に開院から4周年を迎えたかみす消化器内視鏡クリニック。日々忙しなく働く中で、開業医として、また経営者として、大変だと感じることも少なくない。

「病院で働いていた頃と比べて、患者さんのキャラクターが大きく違うと感じています。病院では癌などの重篤な疾患を抱えた患者さんと接していましたが、クリニックではコンビニに立ち寄るような感覚で薬を受け取りに来る患者さんもいらっしゃいます。一口に消化器外科の患者さんと言っても考え方や性質は人それぞれ異なるため、接し方などは難しいなと感じます。そして経営者としては、やはり人事や経営のマネジメントが大変です。自らクリニック経営を担うことで、医療業界の厳しさを実感しています。特に昨今の診療報酬改定によって、病院もクリニックもますます経営が難しくなるのではないでしょうか」

医療業界の厳しい現状を知る一方で、開業医だからこそ広がった世界もあるという。

「勤務医の時は同業者との親交がほとんどでしたが、開業して経営者になると、異業種の方と交流する機会もぐっと増えました。今までとは異なる環境の中で、ビジネスや人生に対する学びを得ることができていると感じます」

最後に、これから開業を考えている先生方へ向けてメッセージをいただいた。

「勤務医にしても開業医にしても、医師を取り巻く環境はどんどん厳しくなっています。これを読んでいる先生方も皆さんご存知だとは思いますが、かつてのように『医師免許を取得して医局に入り、そのレールに乗れば一生安泰』という時代は、すでに終わりを迎えつつあると思います。日本の医療業界の現状を調べて、自分の置かれている環境を理解しようとしなければ、医師として生き残れない可能性も考えられます。国が考える医療の方針など、積極的に情報を取りに行く姿勢が大切なのだと思います。医歯薬ネットさんもYouTubeでそのような話題を取り上げているので、医療の状況を知るために、まずはチェックしてみるのも良いでしょう。
そのうえで開業すべきと思った方は、クリニック開業に特化したコンサルタントに相談することをお勧めします。開業にあたって必要な準備や、物事を行うタイミングは、経験者でなければ分からない部分が多いと思います。医歯薬ネットさんはこれまで数多くの開業をお手伝いしているということもあって、私は何も困ることがなかったです。開業支援のプロである医歯薬ネットさんにお任せするというのは良い選択だと思います」(掲載内容は、取材当時のものとなります)

処置室
X線室
X線室

 

クリニックのレイアウト

需要があればCTを導入できるように、X線室は広いスペースが確保されている

Doctor’s Profile

【ご経歴】
2004年 日本医科大学医学部卒業
     日本医科大学付属病院にて初期研修
2006年 日本医科大学付属病院 第一外科(消化器外科)
2008年 筑西市民病院 医長
2010年 日本医科大学付属病院 助教
     日本医科大学千葉北総病院 助教
2012年 日本医科大学多摩永山病院 助教
2014年 神栖済生会病院  医長
2017年 同 外科部長
2021年 かみす消化器内視鏡クリニック開院

【所属学会・資格など】
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・研修指導医、日本循環器学会 循環器専門医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、日本糖尿病協会 登録医・療養指導医、日本小児・思春期糖尿病学会 評議員

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