開業医インタビュー いな内科・糖尿病クリニック 伊奈 雄二郎 院長

いな内科・糖尿病クリニック 外観

自分と同じ1型糖尿病患者を助けたい
着実に患者数を増やし 開業2年目で医療法人化を達成!

※1489magazine vol.45―2025年2月発行号より転載

いな内科・糖尿病クリニック 2022年10月開業
山口県下関市伊倉新町1-5-43 クリニックホームページはこちらから

 

新幹線と在来線(山陽本線)が接続しており交通の利便性が高く、教育環境も充実している点から子育て世帯を中心に人気を集める山口県新下関エリア。地方都市は少子高齢化や都市部への人口流出によって人口減少が避けられない状況であるが、県内の交通網の中心を担う新下関駅周辺は今後も安定した人口構造を維持すると見込まれている。
そのような新下関エリアで、2022年10月に「いな内科・糖尿病クリニック」が開院した。2024年12月には医療法人化を達成するほど多くの患者が訪れるクリニックに成長し、地域にとってなくてはならない存在だ。院長の伊奈雄二郎先生は、理想としていた1型糖尿病の診療をクリニックで実現している。

伊奈雄二郎先生写真

自分の特徴を活かした診療を行うために

 両親や親族に医療従事者がいない伊奈先生が医師を志したのは、小学5年生の頃に1型糖尿病を発症したことがきっかけだった。
糖尿病の中でも、一般的に生活習慣病と称される2型糖尿病とは違い、1型糖尿病はインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が自己免疫によって壊れることで発症する。β細胞が破壊されると体内でインスリンを作ることができなくなるため、1型糖尿病患者は生涯にわたってインスリン療法を行わなければいけない。
この現実に、当時11歳の伊奈先生は大きなショックを受けた。しかし主治医の先生が親身に寄り添い、助けてくれたことで憧れを抱き、自分も医師になろうと決意したという。伊奈先生は初志貫徹し糖尿病専門医になり、加えて循環器専門医も取得している。

「医者になってから循環器内科にも興味が出てきたのですが、糖尿病と循環器疾患は密接に関わっていることもあり、勉強して損することはないだろうと思いました。自分が1型糖尿病だからといって糖尿病のことしか分からない医者になるのも嫌だなと思っていたので、卒業後はまず循環器科に進みました」

 福岡県内の病院を中心に循環器内科、糖尿病内科で研鑽を積んでいた伊奈先生は、2020年10月に福岡県で開催された医歯薬ネットの開業セミナー「医院開業知識集中講座」に参加され、翌年1月に開業支援契約を締結した。

「病院の勤務医の場合、1型糖尿病患者であり循環器、糖尿病の専門医でもあるという自分の特徴を活かして働くのは難しいと感じていました。これは開業してから改めて感じたことでもあるのですが、クリニックであれば私が1型糖尿病患者であるということを発信でき、同じ悩みを抱えた患者さんが集まりやすい場所を提供することができます。しかし病院では1型糖尿病患者であるという情報が隠れてしまい、外部への発信は難しかったのです。1型糖尿病の診療を本気でやるためには開業した方がいいだろうと思っていたところ、病院に届いていた1489MAGAZINEを読んで医歯薬ネットの存在を知りました。とりあえず見学してみようという気持ちで福岡セミナーに参加した際、のちに私の担当コンサルとなる猪谷さんに出会いました」

伊奈先生の開業をサポートした医歯薬ネット九州支社のコンサルタント猪谷は、当時のことを次のように振り返る。

「セミナー後に行った個別面談では、伊奈先生はまだ開業について具体的には考えていないとおっしゃっていました。しかし色々とお話を伺う中で、ご自身の経験を生かして1型糖尿病患者様に寄り添った診療をしたいという伊奈先生の強い思いを感じ、何とかしたいと思ったのを覚えています。開業支援契約締結後に何度も打ち合わせを行いましたが、先生からいただく質問に曖昧な回答をすることがないよう、自分で徹底的に調べたり、社内の詳しい者に意見を聞いたりしながら、しっかりとサポートさせていただきました」

真摯にサポートする姿勢は、伊奈先生にもしっかりと伝わっていたようだ。

「実は医歯薬ネットさんと並行して薬局などにも相談していたのですが、そちらはどうにも信頼しきれない感じがありました。それに比べて医歯薬ネットさんのコンサルは良かったです、本当に助かりました。猪谷さんがこの物件を見つけ出してくれたことも大きいですが、親身に相談に乗ってくれる人柄の良さが何よりも良かったと思います」

患者に長く寄り添えるクリニック

待合室・診察室

 交通量の多い幹線道路から交差点を一本入ると、いな内科・糖尿病クリニックと書かれた大きな自立看板がすぐ に目に入る。現在クリニックが建っている場所は新下関駅から車で3分、徒歩圏内で、尚且つバス停留所からも徒歩1分とアクセスが良い。さらに近隣には県内屈指の大型ショッピングモールがあり、地域住民からの認知度も非常に高い立地である。

「私が下関出身なので、開業するなら下関市と考えていました。開業地選定では競合クリニックが少ないことや診療圏調査で推計患者数が多いところ、広い駐車場を確保できる面積があること、道路からの視認性の良さなど様々な条件を重視していたのですが、それらに合致したのがこの場所でした。猪谷さんがいい場所を見つけてくれて感謝しています。現在は遠方からも沢山の患者さんが来てくださっています」

理想的な地に建つクリニックの外観は、シンプルなモダンスタイルで洗練された印象を与えながらも、木の素材をアクセントとして用いることで温かみをプラスしている。クリニック内に入ると待合室は床から天井まで木に囲まれ、吹き抜けと大きな窓によって温もりと開放感のある空間が広がっていた。伊奈先生が目指したのは、だれもが居心地の良い空間だ。

「当院のホームページにも『地域の皆さまに長く寄り添う診療を』と書いているのですが、糖尿病内科という科目の特性上患者さんはクリニックに長く通院することになるので、患者さんにとって通いやすく、居心地の良い空間になるように造りました。老若男女問わず受け入れられるのは木かなと思って設計士さんに希望を伝えたところ、私の要望を上手くまとめたデザインを作ってくださいました。狙い通り、患者さんからも落ち着くと言っていただけて好評です」

物件が決まってからは銀行融資をはじめとする開業準備もスムーズに進み、10月1日、2日に開催した内覧会には地域住民のみならず、病院関係者も多く訪れた。

「セミナーに参加した当時は済生会福岡総合病院で働いていて福岡県に住んでいたのですが、医局に対して下関市での開業の意向を伝え、開業の1年前に下関市立市民病院に異動させてもらいました。猪谷さんとの打ち合わせを病院の会議室で行えるほどオープンでしたね。代わりと言ってはなんですが、市民病院に赴任したころは糖尿病専門医が誰もいなかった中で診療体制を整え、今では3名体制になりました。私も週に1回外来に出ていて、良好な関係を築いています」

不安ばかりの日々から一転 今では法人成りするほどの人気クリニックに

 下関市内で糖尿病内科を標榜しているクリニックは現在(2024年12月時点)9施設あるが、糖尿病専門医が診療を行うクリニックは伊奈先生含め3施設に絞られ、さらにクリニック名に「糖尿病」と入れて専門性を謳っているのは「いな内科・糖尿病クリニック」だけだ。今でこそ伊奈先生を頼って数多くの患者が訪れるが、開院当初は不安も多かったという。

「開業当時は1日10名しか患者さんがいらっしゃらない日もあって、借金を返せるのか不安で仕方なく、たびたび猪谷さんに連絡していました。しかし徐々に患者数が増えていったことで半年後には不安も和らぎ、きちんと返済していくことができると思えるようになりました。今では1日50名ほど来院していただいており、新患数も月100名ほどいらっしゃっています。患者さんが毎日少しずつ増えていくのは嬉しいですし、伊奈先生に診てほしいと言っていただけるとやりがいを感じます。病院で働いているとどうしても診療以外にもやらなければいけない仕事が多々ありましたが、今は好きな仕事に打ち込めていて、開業して良かったと感じています」

診療に集中できる環境の中、クリニックは開業から約2年で医療法人になることができた。これには伊奈先生も「予想以上に早かったです」と話す。

「開業当時は法人化など全く考えていませんでしたが、税理士さんに早く法人化した方がいいと促されて、2024年12月に医療法人となりました。経営者としては何もかもが初めてなので大変なこともありますが、良い人生経験になっていると思います」

なお、担当コンサルの猪谷によれば、この医療法人化についてこんな裏話があるようだ。

「実は、開業1年目の時点で医療法人化できるラインには達していました。しかし伊奈先生は一度様子を見たいということで保留され、2年目のタイミングでの法人化となったのです。やろうと思えば1年目で法人化できるほど患者さんが集まり、収益が立っていたということです」

患者として、専門医として

 1型糖尿病の患者数は糖尿病人口全体の5%以下と、2型と比べて圧倒的に患者数が少なく、社会的認知度もまだまだ低い。自分の経験を活かした診療を行いたいと思って開業された伊奈先生は、通常診療以外にも1型糖尿病患者に寄り添っていた。2024年9月に主催した「下関1型糖尿病セミナー」では、伊奈先生が「1型糖尿病とともに生きる方法」と題して講演を行ったほか、参加した患者とそのご家族を交えたディスカッションを行うことで交流を深めた。

「1型糖尿病の患者さんは少ないので、患者さん同士がばったり出会うということは難しいです。地域によっては1型糖尿病のコミュニティがあるのですが、残念ながら山口県の西部地域にはそのような集まりはありません。だから患者さんの為になるだろうと思って『下関1型糖尿病セミナー』を主催しました。第一回ということもあって少人数での開催でしたが、患者さんからは参加して良かったというお声もいただくなど、とても好評でした。糖尿病患者であり、尚且つ糖尿病と循環器の専門医を持っている医者というのは珍しいと思うので、自分にできることは全部やろうと思っています。私が言うのもおこがましいかもしれませんが、将来的には糖尿病患者さんに寄り添う地域で一番のクリニックになりたいと思っています」

いな内科・糖尿病クリニック レイアウト 

Doctor’s Profile
【ご経歴】
2004年 鳥取大学医学部卒業
2007年 小倉記念病院 循環器科
2010年 下関市立市民病院 循環器科
2015年 済生会福岡総合病院 糖尿病内科
2018年 飯塚病院 内分泌糖尿病内科
2019年 済生会福岡総合病院 糖尿病内科
2021年 下関市立市民病院 内分泌糖尿病代謝内科
2022年 いな内科・糖尿病クリニック開院

【所属学会・資格など】
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・研修指導医、日本循環器学会 循環器専門医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、日本糖尿病協会 登録医・療養指導医、日本小児・思春期糖尿病学会 評議員

医歯薬ネットが開業支援をさせていただきました

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