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2024年7月5日

公的病院長の就任資格制限と医師の偏在対策に潜む医療業界の危機

みなさんこんにちは!

今回は、骨太の方針に盛り込まれた院長就任資格制限と医師の偏在対策による医療業界の危機についてお話しします。

本格化する医師の偏在対策

都市部に医師や診療所が過剰となっている一方で、地方では過少となっている医師の偏在問題

既存の診療所の医師が高齢であったり、特定の診療科目の診療所が無くなってしまったりと
地域医療の維持が難しい状況に置かれる地域がでてきました。

医師の高齢化による医院閉鎖などが理由で小児科医がいなくなってしまった鹿児島県志布志市や、
もともと小児科医がいなかった同県大崎町では、
新たな開業医を誘致するため開業資金を最大で1億円を補助するという支援を打ち出しました。
この政策は、地域医療を守るほか、医師の少ない地域に医師を誘致しているという面で、医師の偏在対策にも貢献しています。
このような事例は、多くの自治体に存在し
地域医療を守るためにも本格的に偏在対策に取り組んでいくという姿勢が感じられます。

骨太の方針に盛り込まれた「医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度」

骨太の方針は、経済財政諮問会議で協議される、日本の経済や財政を運営するための基本方針です。

この重要な方針に、「医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度」が盛り込まれました。

(参考)内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2024について https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/2024_basicpolicies_ja.pdf

(参考)厚生労働省 医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度について(概要) https://www.mhlw.go.jp/content/001151762.pdf

これは、制度の名称にある通り、医師少数区域等での勤務経験を厚生労働省が認定する制度のことです。

それぞれの患者さんの生活に合った幅広い病態に対応する継続的な診療と保健指導、
他の医療機関等との連携、地域保健活動といった業務を6か月以上行うと、認定がもらえます。

この認定をもらうと、医療レベルの向上や取得資格の維持にかかる費用について支援が受けられます。

さらに、病院の管理者になるためにはこの認定が必須となります。
もともと地域医療連携推進法人の管理者になる要件として組み込まれたものですが、今回はこの要件の適用範囲を広げていく方針です。

どのような病院について適用されるかは明確にはなっていませんが、
公的病院(国からの指定を受けた団体が解説した医療機関)の管理者になるための必須要件になると、弊社は考えています。

このように、医師少数区域へ医師を配置する動きを着実に進めているのです。

これに加えて医師過剰地域については、地域別単価の導入や新規開業の実質的な制限を行うことで、偏在対策が進められています。

地域別単価の導入と新規開業の実質的な制限についてはこちらの記事をご参照ください。 地域別単価の導入と医師過剰地域における新規開業規制について

偏在対策の一方で医療業界にも「失われた30年」が到来!?

上記でお話しした通り、医師の偏在対策は本格的に進められています。
ですが、これはメリットばかりではないかもしれません。

地域に必要な診療科目や診療所の数を行政が決定するため、自由競争ができず、クリニック市場の衰退を招いてしまう恐れがあるからです。
淘汰されるべきものが淘汰されず、革新が進みにくくなり、日本経済が経験した「失われた30年」が医療業界にもやってくるかもしれません。


今回お話しした内容は弊社YouTubeチャンネルの動画でも解説しております。

併せてご覧ください。

【骨太の方針と院長就任資格制限について】

【医師過剰地域における医師の過密対策について】

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