開業コラム
公開日:2026年3月6日
駅前テナントで開業するか、郊外の戸建てで開業するかは、先生方が開業地を考える際、最初に直面する問題になるかと思います。
どちらにも長所・短所が存在するため、一概にこちらにすべきです!とは言い切れませんが、先生の標榜科目と診療方針によって、集患が期待できる立地は変わります。
駅前テナントと郊外戸建てで迷われている先生へ、参考になりますと幸いです。
まず駅前テナントは同じ「駅前」でも、一等地で住宅街を背にした場所、繁華街の駅前、タワーマンション近隣やタワーマンション内テナントなどタイプが分かれます。
このタイプによって住民構成・人流・競合環境が変わるため、希望する標榜科目や診療方針を元に検討します。
この駅前テナントの長所としては、下記のような点が挙げられます。
■ 視認性が高く、存在を認知されやすい
テナントは分かりやすく視認性が高いため、人の目につきやすく、説明不要で「ここにクリニックがある」と伝わります。
■ 医師としての満足感(“駅前・一等地”のブランド)
■ 民力(所得・知識層)に期待できる
所得が高く知識層が多いエリアでは、医療にお金を使ってくれる傾向があり、患者と医師との親和性が高くなる可能性があります。
では逆に、駅前テナントの短所は何でしょうか?
■ 家賃が極めて高い(超一等地・乗降客の多い駅ほど高額
■ 競合が多く、埋没リスクがある
特に超一等地や乗降客の多い駅前は家賃が極めて高くなりますし、目立つ反面、競合クリニックも多く、埋没するリスクがあります。
■ “通勤客が多い”=“患者になる”とは限らない
乗降客が多い駅だとしても、利用者の「視界に入ること」と「患者になること」は別で、利用者が若年層中心なのか中高年中心なのか、通勤客なのか駅周辺居住者なのか、といった属性を見誤ると集患に直結しません。
■ 駅近居住者は意外と少なく、将来転出も起こり得る
駅周辺は地価が高く持ち家が難しいため賃貸居住が多く、将来的に郊外へ転出する層が一定数いる点も見落とせません。
■ 体調不良時に「駅前まで行くか」問題がある
駅近は「住んでいる人口が少ない」ことも多く、駅から自宅が遠い人にとっては、体調が悪い日に“駅前のクリニックまでわざわざ行くか”という壁が生まれます。
駅前や駅周辺でのご開業を希望される場合は、若い賃貸層や子育て初期層が中心になりやすい、という前提で考える必要があります。
都会近隣の人口が多い郊外/地方の中核都市/開業医が少ない地方など、
郊外でも「人口の厚み」や「医療供給の不足」がある場所を狙うのが前提になります。
さて、そんな郊外戸建ての長所としては、下記のような点が挙げられます。
■ 競合が少ない/弱い/既存の開業医が高齢化している可能性
既存クリニックの開業医は65歳以上が6割を占めるため、引退が見込まれる地域ではチャンスが生まれます。
■ 医療の“エアポケット”を見つければ患者を集めやすい
医師が少ない医療のエアポケットを見つけられれば、地域ニーズが高く患者を集めやすくなります。
■ 駐車場を広く確保できる
弊社がご開業を支援した先生に開業後に後悔したことを伺うと、最も多く出る意見が「駐車場をもっと確保すべきだった」という点です。
実際に駐車場を増やすためにご開業後に追加で土地を購入したり借り上げたりする先生もいらっしゃるため、土地面積で迷われている先生は駐車場に割く面積は思い切って広めに見積もることをお勧めします。
では、郊外戸建ての短所も考えてみましょう。
■ 子どもの教育環境に不利になり得る
子どもの教育環境が都心部に比べ限定的になるため、教育環境を重視する家庭には不利になる場合もございます。
■ 建築コストがかさむ
戸建ての場合は地代や建築コストがかさみ、初期投資が大きくなりがちな点も懸念点になりうるでしょう。
■ 将来人口が読みにくい(特に地方)
地方では少子高齢化、人口減少が進んでいるため、将来人口が読みづらい傾向にあります。
診療圏調査で人口ピラミッドなどを確認し、開業時の人口動態だけではなく、将来の人口構造まで見た上で判断する必要があります。
開業形態による長所・短所を整理したところで、何よりも重要な「立地」について考えてみましょう。
■ 患者の分布(北南東西)と地形(坂の上り下り)を見る
住宅地が集中している方角、逆に商業地や工業地で患者が少ない方角を見極めることで、効果的な集患戦略を立てられます。
また、地図では近く見えても、坂の上り・下りがあるだけで患者の来院頻度は大きく変わります。
特に高齢者、ベビーカーを押す親、自転車での来院を考える患者にとって、坂道は大きな障壁となります。
■ 住宅地内も「看板設置」で成立し得る
一見視認性の悪そうな住宅地の奥まった場所でも、大通りなど適切な位置に案内看板を設置すれば患者を誘導出来るため、
初めての患者でも迷わず来院できる環境を整えられます。
■ 幹線道路は“入りにくさ”がある場合がある
幹線道路沿いは視認性は抜群ですが、中央分離帯のせいで反対車線から入れない、車速が高く敷地内へ入りづらいなど、交通状況によっては微妙なケースも存在します。
■ 歩道の安全性(幅・ガードレール)は来院の安心感につながる
歩道の幅が十分にあるか、ガードレールが設置されているかは、ファミリー層の来院に直結します。
ベビーカーを押しながら、あるいは小さな子どもと手をつないで安全に歩けるか、自転車(特にママチャリ)でも通行しやすいかを考慮しましょう。
「患者はどうやって来るのか」を検証することも重要です。
■ 徒歩/自転車/車/タクシー/電車の現実性を検証
先生の希望されるエリアでは、徒歩・自転車・自家用車・タクシー・電車のどれが主流になるでしょうか?
例えば、発熱している患者は電車に乗って来るでしょうか?
体調不良時は徒歩圏内や車での送迎を選ぶ人が多いため、駅前だから利便性がいい、郊外は悪いという単純な構造ではありません。
■ 駐輪場・駐車場・タクシーの停車余地の有無
自転車や車での来院がメインになる場所でご開業される場合、駐輪場・駐車場の台数が十分でないと、
せっかく来院しても車が停められず受診できなかった、という可能性も出てきます。
そして高齢者や体調が悪い患者はタクシーを利用することも多いため、タクシーが安全に停車できるスペースがあるか、乗り降りしやすいかを確認する必要があります。
■ 商店街やモールは「混雑」「歩く距離」「渋滞」も評価対象
駅前商店街は混雑しており、車での進入が困難な場合も多いです。
ショッピングモール内のクリニックモールには大抵広い駐車場がありますが、駐車場から店舗まで歩く距離が長く、体調が悪い患者には負担になります。
自転車や車での来院がメインになる場所でご開業される場合、駐輪場・駐車場の台数が十分でないと、
せっかく来院しても車が停められず受診できなかった、という可能性も出てきます。
【駅前向き】心療内科・精神科・泌尿器科・美容系など
一般論として、心療内科・精神科・泌尿器科・美容系などは、生活圏(自宅近く)や勤務先近くを避けたい心理が働くことがあり、
駅前テナントの交通利便性が活きやすいと言えます。
また、上記の診療科を訪れる新規患者はほぼ確実にHPを見て受診するクリニックを決めるため、
単に建物としての視認性を重視するのではなく、インターネットでの集患に力を入れる等、“必要な人に見つけてもらえる導線づくり”という視点も重要です。
【郊外向き】一般的な診療科(総合的な需要を取りやすい)
一般的な診療科目は、郊外戸建てが向いているケースが多いです。
これらの診療科は、日常的な健康管理や急性疾患の治療を扱うため、自宅から近い場所=生活圏内での受診ニーズが高くなります。
さらに郊外ではかかりつけ医としての役割が特に重視されるため、地域に根差した医療を提供することで、住民からの信頼を得やすく、口コミによる集患効果も期待できます。
弊社セミナーでもお伝えしておりますが、売上は「単価×数量」だからこそ、
患者数が多い場所を選ぶのが鉄則であり、
多くの患者に「対応できる広さ・設備」がないと取り切れません。
開業地選びの鉄則は「患者数が多い場所」を選ぶことです。
クリニックは出来高の手数料ビジネスで、毎月の経費の大部分を占める人件費と家賃はほぼ変動することがありません。
売上は基本的に「単価×数量」で算出されますが、保険診療がメインとなるクリニックにおいては診療報酬(単価)がほぼ固定されているため、患者数(数量)が売上・利益に直結します。
しかし、駐輪場や駐車場がない、待合が狭い、診察室が1つしかない――こうした条件では患者が多くても処理しきれず、せっかく集患できても機会損失に繋がってしまいます。
つまり患者数が多いだけでなく、その患者数をさばける広さと設備を整えられることが必須条件になるのです。
駅前か郊外かは、標榜科目と患者の心理・行動を前提に、合理的・論理的に検証して決めるべきです。
物事にはそれぞれ長所・短所があり、一概にどちらにすべきですとは断言できないため、
先生の診療方針と見込み患者の需要と供給が一致する開業地・開業形態を検証していきましょう。

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