※1489magazine vol.44―2024年10月発行号より転載
せいの胃腸内科クリニック
自然環境に恵まれ、スイカの産地として有名な千葉県富里市。この地に2021年2月、内科・消化器内科・肛門外科・外科を標榜する「せいの胃腸内科クリニック」が開院した。消化器内科の需要が非常に高いエリアでご開業された清野晃吉先生のもとには、連日多くの患者が訪れている。
小学4年生の時に祖父を胃がんで亡くしたことがきっかけで医師を志した清野先生。祖母や両親に応援されながら東邦大学医学部へと進学し、迷うことなく消化器外科医の道を歩み始めた。
東京都や千葉県の病院で経験を積んでいた清野先生だが、外科医としてどう在りたいか考えるようになった結果、開業を検討するようになったという。
「私が医師になって以降、外科手術の主流が開腹手術から腹腔鏡手術へと移り変わり、更に手術支援ロボット『ダヴィンチ』が登場するなど、外科医療は目覚ましい発展を遂げました。私は千葉県の八街総合病院(現:新八街総合病院)で長年勤務をして外科手術なども担当していましたが、新しい技術が次々と出てくる中で、ダヴィンチによる手術手技の習得まではなかなか手が回らない状況でした。また、診療の中でも内視鏡検査が好きだったこともあり、私が内視鏡検査でがんを早期に見つけて、病院に紹介するという形が良いのではないかと考えるようになりました」
清野先生が開業を検討し始めた頃、東邦大学の同級生である池宮城慶寛先生※1が開業したことを知った。
「池宮城先生が成田市でご開業されたと聞いて連絡を取ったところ、医歯薬ネットさんにコンサルを依頼されたと伺いました。そしてそのまま、池宮城先生を通じて医歯薬ネットさんへご紹介していただきました」
※1 池宮城慶寛先生 いけみ耳鼻咽喉科クリニックの院長。同じく耳鼻咽喉科医の奥様が副院長を務める。医歯薬ネットご支援のもと、2017年9月に千葉県成田市でご開業された。池宮城先生の開業医インタビューは、ページ下部参照。
池宮城先生からご紹介を受けて医歯薬ネットの営業担当者と面談を行った清野先生は、開業支援業務契約を締結し、早速物件探索を始めた。
開業地として清野先生が重視したのは、内視鏡医が不足しているエリアということだった。現在せいの胃腸内科クリニックは千葉県富里市の七栄という地区にあるが、近隣に内科の競合クリニックは少なく、更に内視鏡検査(上部・下部)を行うことに限れば空白地帯であった。
「富里市の中でも日吉台という地区には病院や内視鏡検査を行うクリニックもあるのですが、この七栄地区には内視鏡医が全くいませんでした。更に七栄に隣接している酒々井町や八街市も似たような状況だったので、この辺りには内視鏡医が必要だと感じて開業エリアを定めました」
15台分ある駐車場は二方向から進入可能です
医歯薬ネットと共に物件探索を進める中で、いくつかの物件が候補に挙がった。その中でも清野先生が「ここが良いのではないか」と感じた物件が、現在クリニックが建っている土地である。
「交通の流れとしては八街市から成田市に向かう人が多いと思うのですが、このクリニックの目の前を走る幹線道路(国道409号)は成田市に向かう場合必ず通る道になります。勤務医時代の私の通勤ルートだったので地理的にもよく分かっていましたし、道路からの視認性が抜群ということもあり、この場所を選びました。ここで開業できて良かったと思っています」
開業地が決定した後は銀行との融資交渉や建築・内装デザインの決定、医療機器選定、スタッフ採用等、開業に向けてやるべきことはさまざまあったが、清野先生も医歯薬ネットの担当者も口をそろえて「スムーズだった」と言うほどとんとん拍子で進んでいったという。
「コロナ禍だったので設計士の方と外観や内装について対面で打ち合わせをする機会はあまり取れなかったのですが、素敵なデザインをすぐにご提案していただけました。待合室の天井は吹き抜けで広く作っていただいて、とても気に入っています」
左:吹き抜けの待合室、右上:診察室、右下:X線室
内視鏡医が不足するエリアでのご開業となったが、清野先生が目指したのは内視鏡検査に特化した専門クリニックではなく、一般内科も標榜した「地域のかかりつけ医」となるクリニックであった。
「近隣にお住まいの方々にとってのかかりつけ医になりたいという気持ちがありましたし、一般内科を診たうえで内視鏡検査を行えば、検査件数も伸びるのではないかと考えました。おかげさまで開院当初から多くの患者さんに来ていただいており、今では1日当たり80人以上の患者さんがいらっしゃるようになり、100名を超える日もあります。加えて上部内視鏡検査を5件、下部内視鏡検査を3件ほど毎日行っているので、内視鏡検査は手いっぱいの状況です」
内科クリニックの1日あたりの平均来院患者数は「40人」が一つの目安となっている為、せいの胃腸内科クリニックには倍以上の患者が来院しているということになる。特に上部内視鏡検査は約2か月待ちの状態ということで、今後は内視鏡医を非常勤で雇うことも検討しているとのことだ。
「想定以上に30~40代の患者さんが多くいらっしゃっていますし、診療圏調査※2では想定していなかった旭市や東金市(車で1時間以上離れるエリア)からも、近隣に肛門外来がないという理由で患者さんがいらっしゃっています。加えて隣町にあった肛門科を標榜するクリニックが閉院したこともあり、そちらの患者さんも来ていただいている状況です。15台分ある駐車場がすぐにいっぱいになってしまうので、どうにかして駐車場を増やせないかと考えています」
※2 診療圏調査 その場所で開業したら、1日あたりどのぐらいの患者数が見込めるのか(推定患者数)を算出するツール。清野先生の場合は開業希望地を中心として半径1km、2km、3kmの範囲で診療圏調査を行ったが、実際は更に広域からも患者が訪れる結果となった
左:内視鏡室
右:前室(向かって右手の扉は内視鏡検査を受ける患者専用のトイレ・更衣室、奥の扉は内視鏡室へとつながっている)
開院当初から多くの患者が集まっていたせいの胃腸内科クリニックには、2021年2月に開院したという事もあって発熱患者も多く訪れていた。クリニック内に発熱患者専用の隔離室は設けていなかったが、清野先生は機転を利かせてコロナ禍を乗り越えたという。
「開院してからは毎日手探りの状況で、発熱等の症状がある患者さんには車で待機していただき、そのまま車で検査をして、診察をするという形をとっていました。また、院内には内視鏡検査の際に下剤を飲んでいただく前室があるのですが、そのお部屋は午前中しか使わないので、午後は前室を隔離室として活用することで対応していました」
未曽有のパンデミックにも対応しつつ、一般患者の診察、治療も丁寧に行うせいの胃腸内科クリニックには、患者から高い評価が寄せられている。遠方からも患者が来る理由には、口コミや評判の高さもあるのだろう。清野先生に、患者応対で大切にしていることを伺った。
「他のクリニックの口コミや評判を見ていると『先生が目を見てくれない』というものも多いので、基本的なことですが、患者さんの目をちゃんと見る、頷きながら聞くなどの傾聴力は大切にしています。とは言え、毎日これだけ多くの患者さんがいらっしゃると一人一人の診察にかけられる時間はどうしても短くなってしまうので、患者さんの満足度を上げる為にも今後はもう少しやり方を考えていかなければいけないと考えています」
そして口コミの中には、「先生や看護師さん、受付の方もすごく対応が良かった」、「先生はよく話を聞いてくれるし、看護師さんをはじめスタッフの方々も丁寧で感じがいい」など、清野先生のみならずスタッフの対応の良さを評価する声も多数挙がっている。クリニック開業においてはスタッフ問題に悩む先生も少なくはないが、清野先生はそのような悩みは全くないとのことだ。
「当院には、オープニングスタッフとして採用したスタッフさんで、今でも働いてくださっている方が多くいらっしゃいます。患者さんからの評判もとても良いですし、私が指示や指導をしなくても皆さん自分で考えて積極的に動いてくださるので、とても助かっています」
開業して4年目を迎えた今、清野先生に開業に関する率直な思いを伺った。
「医歯薬ネットさんに任せていればスムーズに物事が進んでいったので、不安がない状態で開業準備を進めることができました。自分でやろうと思っても開業は分からないことだらけなので、医歯薬ネットさんには言うことなしです。そして実際に開業してみて、勤務医時代と比べると当直がなくなったことは非常に大きいと感じます。休日をしっかりと確保できるので、家族と過ごす時間も増えました。忙しい日々ですが、仕事と休みのメリハリをつけられるようになったので、開業して良かったと思います」
「2024年6月に行われた診療報酬改定によって内科のクリニックは少なからず影響を受けたと思いますし、それは当院も例外ではありません。しかしこのような状況でもやれることは沢山あるでしょうし、自分の診療スタイルが決まっているのであれば、早めに開業してみても良いのではないかと考えます」
クリニックのレイアウト
Doctor’s Profile
【ご経歴】
2005年 東邦大学医学部卒業
2005年 東京労災病院 臨床研修医
2007年 東邦大学医療センター大橋病院 第3外科
2013年 八街総合病院 胃腸外科
(2018年より新八街総合病院に名称変更)
2021年 せいの胃腸内科クリニック開院
【所属学会・資格など】
日本外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会、日本医師会認定産業医、日本大腸肛門外科学会
今回お名前が挙がったいけみ耳鼻咽喉科クリニックの開業医インタビューもございます。
こちらも併せてご覧ください。
開業医インタビュー@いけみ耳鼻咽喉科クリニック
クリニック開業支援の専門企業として、本格的なコンサルティングを行っている医歯薬ネット。開業の成功の鍵を握る開業場所の探索に力を入れ、開業ドクターの希望エリア内で最適な物件を探索し、ご提案します。安全に開業までサポートした後も、経営相談・会計顧問業務で関わるため安心です。
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